本文へスキップ
検証実験

【実験】30歳からの30年ライフプランを通しでシミュレーションする

執筆: 公開: 更新: 約8分

積立シミュレーションの多くは「毎月○万円を○年間、積み立て続けたら」という一本道の計算です。しかし実際の人生はそうではありません。住宅の頭金で取り崩し、教育費で積立額を減らし、退職金でまとまった資金が入る——増える時期と減る時期が交互にやってきます。

この記事では、当サイトのライフプラン実験室を実際に使って、30歳から60歳までの30年間を「資産形成期」「教育費期」「ラストスパート期」の3フェーズに分け、途中の取り崩しイベントも含めて通しでシミュレーションした結果を報告します。

これは実験ノートです。数値はすべて実際にシミュレーターを動かして得た実測値です。ライフプラン実験室は乱数を使わない決定論的な計算エンジンなので、同じ設定を入力すれば誰でも1円単位で同じ結果が再現できます。ただし後述する通り、これは「毎年きっかり期待リターン通りに増える」という前提のモデルであって、将来の予測ではありません。

30年間の資産推移(現金込み・万円)

まず結論のグラフです。資産曲線は右肩上がりの一直線ではありません。10年目の住宅頭金の取り崩しで一度沈み、15〜19年目の教育費期はほぼ横ばい。それでも最後の11年で一気に立ち上がり、純投資額3,040万円に対して最終資産5,085万円で着地しました。以下、条件と考察を順に見ていきます。

実験の背景

積立投資の記事でよく見る「月5万円を30年続ければ○千万円」という計算には、現実に必ず起こる次の要素が抜けています。

  • 途中の大型出費: 住宅頭金や教育費のために、育てている資産を売却する
  • 積立額の変動: 子育て期は積立を減らし、末子独立後に増やす
  • まとまった収入: 退職金など、一括で投入できる資金

これらを織り込むと資産曲線はどんな形になるのか。NISAの生涯枠1,800万円はいつ使い切るのか。途中の売却に税金はかかるのか。一本道の計算では見えないこれらを、通しで観察してみます。

2026年8月15日の訂正: 公開時のシミュレーターは、NISAを売却しても生涯投資枠が復活しない計算になっていました(実際の制度では売却した簿価分が翌年に復活します)。修正した結果、NISA口座の元本は1,800万円(公開時1,151万円)に増え、枠を使い切る年も25年目から29年目に変わりました。あわせて積立の拠出を年初一括から月次に改めたため、資産額は全体に数%下がっています。あわせて、公開時は計算に含めていなかった信託報酬(保有中ずっとかかる年間コスト)も含めるようにしたため、資産額はさらに1〜2%下がっています。

実験条件

30歳スタート、初期投資100万円、資産配分は先進国株式60% / 国内債券40%、口座は新NISAを選択(枠を超えた分は自動的に特定口座へ)。想定リターン・リスクは当サイト想定値です(数値と根拠はデータの透明性レポートで公開しています)。

30年間を3つのフェーズに分けました。

フェーズ期間毎月積立イベント
① 資産形成期0〜14年目5万円10年目に住宅頭金として500万円を売却
② 教育費期15〜19年目3万円に減額15〜18年目に教育費として100万円 × 4年を売却
③ ラストスパート期20〜30年目10万円に増額25年目に退職金1,500万円を一括投入

生涯の拠出合計は3,940万円、途中の売却合計(住宅頭金 + 教育費)は900万円。差し引きの純投資額は3,040万円です。

結果

30年間の資産推移

節目の年の資産額(現金込み)は次の通りでした。

経過年資産額何が起きたか
0年目100万円初期投資
5年目468万円月5万円の積立が順調に育つ
10年目418万円住宅頭金500万円を売却。5年目より減っている
15年目753万円積立を月3万円に減額、教育費売却が始まる
19年目737万円教育費の売却が積立を上回り、4年間ほぼ横ばい
20年目901万円積立を月10万円に増額
25年目3,398万円退職金1,500万円を一括投入
30年目5,085万円最終資産

冒頭のグラフの通り、資産曲線は右肩上がりの一直線ではありません。10年目には5年目を下回り、15〜19年目はほぼ横ばい。それでも最後の11年で一気に立ち上がり、純投資額3,040万円に対して最終資産5,085万円で着地しました。

フェーズ別の集計

フェーズ拠出売却期間中の平均資産
① 資産形成期(15年)940万円500万円494万円
② 教育費期(5年)180万円400万円715万円
③ ラストスパート期(11年)2,820万円0万円2,871万円

生涯拠出3,940万円のうち、実に2,820万円が最後のフェーズに集中しています。

口座別の内訳とNISAの効果

口座投資元本30年目の評価額
NISA口座1,800万円3,184万円
特定口座1,474万円1,900万円
  • NISA節税効果(含み益 + 実現益ベース): 329万円
  • 30年間の実現損益234万円すべてNISA口座から発生 → 支払税額は0万円
  • NISA生涯枠1,800万円を使い切ったのは29年目(退職金を投入した25年目より後)

考察

資産曲線は一直線には増えない——それが正常

10年目の「5年目より減っている」と19年目の「4年間横ばい」は、一見すると失敗のように見えます。しかしこれは頭金500万円と教育費400万円という人生の目的にお金を使った結果であり、計画通りです。ライフプランの資産曲線に凸凹があるのは異常ではなく、むしろ取り崩しイベントを織り込んだ計画の証拠だと読めます。

逆に言えば、一本道の積立シミュレーションだけを見て「30年後に○千万円」と思い込んでいると、10年目に資産が減った時点で「計画が破綻した」と誤解しかねません。曲線の凹みを事前に見ておくこと自体に、通しシミュレーションの価値があります。

途中で900万円取り崩しても、30年通せば複利は効く

住宅と教育で合計900万円を売却したにもかかわらず、最終資産は純投資額を2,045万円上回りました。牽引したのはラストスパート期です。月10万円への増額と退職金1,500万円の投入で、このフェーズだけで2,820万円を拠出し、平均資産2,871万円という大きな元本に複利が働きました。積立額を増やせる時期に増やし、まとまった資金が入ったら投入する——後半の巻き返しが効くことが数字で確認できます。

NISAの恩恵は「出口」で効いた

この実験で最も注目すべき数字は、支払税額0万円かもしれません。30年間で実現した利益234万円は、売却が保有資産からの比例配分でNISA口座中心に行われたため、すべて非課税でした。特定口座で同じ利益を実現していれば、20.315%の税金(譲渡所得課税の仕組み参照)が引かれていたはずです。

NISAの説明では「利益が非課税」と入口の話をされがちですが、実際に効いてくるのは頭金や教育費のためにお金を引き出す出口の場面です。含み益ベースの節税効果329万円と合わせて、制度の恩恵が人生のイベントと噛み合った実例と言えます(制度の詳細は新NISAガイドへ)。

生涯枠1,800万円は「普通の積立」では埋まらなかった

意外だったのはNISA生涯枠の消化ペースです。月5万円 → 3万円 → 10万円という現実的な積立では、24年かけても枠は埋まりませんでした。退職金1,500万円を25年目に投入してもまだ埋まらず、使い切ったのは29年目です。途中の住宅・教育費でNISAを売却した分の枠が翌年に復活するため、そのぶん枠に余裕が生まれるからです。「生涯枠1,800万円は大きすぎて関係ない」と感じる人も多いと思いますが、取り崩しても枠が戻ってくることまで含めると、この枠は生涯にわたって使い回せる器だと分かります。

この実験の限界

実験ノートとして、この計算にできていないことを正直に書きます。

  • 毎年きっかり期待リターン通りに増える決定論的計算です。 実際の市場は上下に大きくぶれます。この計算は「平均的なシナリオをなぞったモデル」であって将来の予測ではありません。特に、取り崩しの直前に暴落が来た場合の影響はこの実験では見えません。そのリスクは別記事「取り崩し期の暴落リスク」で検証しています。
  • 想定リターンは当サイト想定値であり、将来を保証しません。 想定値を変えれば最終資産の数字も変わります。
  • 税の扱いは簡略化しています。 損益の通算は年内のみで、翌年以降への繰越控除はモデル化していません。
  • インフレ・昇給・iDeCoなどは考慮外です。 30年間の物価上昇を織り込めば、最終資産5,085万円の実質的な価値は額面より小さくなります。

あなたのライフプランで再実験してください

この実験のフェーズ分けと金額はひとつの例にすぎません。ライフプラン実験室で同じフェーズ・同じ取引イベントを設定すれば、この記事と完全に同じ数字が再現できます。決定論的な計算なので、乱数によるブレはありません。

そして再現できたら、次は自分の数字に置き換えてください。頭金の金額、教育費のタイミング、退職金の有無——条件を変えたときに資産曲線の凹みがどう変わるかを事前に見ておくことが、このツールの本来の使い方です。計算の基本的な仕組みは計算方法の解説をご覧ください。

出典

あわせて読みたい

この記事は が執筆しました。数値は当サイトのシミュレーターで実際に計算したもので、出典と前提は本文中に明記しています。誤りにお気づきの際はお問い合わせからご指摘ください。

本記事は情報提供・教育を目的としたものであり、特定の金融商品の推奨や投資助言ではありません。 投資判断はご自身の責任で行ってください。詳細は免責事項をご確認ください。