2024年1月に始まった新NISAは、「つみたて投資枠」「成長投資枠」「生涯投資枠」という3つの枠で構成されています。名前が似ていて混乱しやすいこの3つの関係を、この記事で一度に整理します。制度の内容は金融庁・国税庁の公表資料に基づいています。
NISAとは何か — 利益への課税がゼロになる口座
通常の証券口座(特定口座・一般口座)では、株式や投資信託を売却して得た利益に20.315%の税金がかかります。内訳は所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%です(詳しくは株式譲渡益課税の解説記事を参照)。
NISA口座は、この課税が非課税になる制度です。たとえば100万円の利益が出た場合、特定口座なら約20万円が税金として差し引かれますが、NISA口座なら利益をそのまま受け取れます。対象は日本在住の18歳以上の人で、NISA口座は1人1口座です。
制度の法的な根拠は租税特別措置法(第37条の14)にあり、「非課税口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税」として定められています。
3つの枠の関係
新NISAの枠は「年間の上限」と「生涯の上限」の2階建てで理解すると分かりやすくなります。
| 枠 | 年間投資上限 | 生涯投資枠のなかでの位置づけ |
|---|---|---|
| つみたて投資枠 | 120万円 | 生涯投資枠1,800万円に合算 |
| 成長投資枠 | 240万円 | 同上。ただし1,200万円まで |
| 年間合計 | 360万円 | 生涯合計1,800万円 |
ポイントは次の3つです。
- 年間上限: つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円は別々にカウントされ、両方使うと年間最大360万円まで投資できます。
- 生涯投資枠: 2つの枠での買付額は合算され、生涯で1,800万円が上限です。
- 成長投資枠の内枠制限: 1,800万円のうち成長投資枠で使えるのは1,200万円までです。逆に、つみたて投資枠だけで1,800万円全部を使うことは可能です。
つまり「生涯投資枠1,800万円」という大きな器の中に、「成長投資枠は最大1,200万円まで」という内側の仕切りがある、という構造です。
なお、NISA口座内の商品を売却した場合、その買付額(簿価)ベースで翌年以降に生涯投資枠を再利用できる仕組みがあります。詳細な条件は金融庁の「新しいNISA」ページを参照してください。
旧NISAとの違いで特に重要な2点
2023年までの旧制度(一般NISA・つみたてNISA)と比べて、実務上とくに大きい変更点は次の2つです。
- 非課税保有期間が無期限になった。 旧制度には非課税で保有できる期間の上限がありましたが、新NISAでは期限がなく、売却を急ぐ制度上の理由がなくなりました。
- 2つの枠を併用できるようになった。 旧制度では一般NISAとつみたてNISAのどちらか一方しか選べませんでしたが、新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠を同じ年に併用できます。
また、新NISAは旧制度と違って恒久的な制度として設計されており、口座開設期間の期限も設けられていません。
2つの枠で買える商品の違い
- つみたて投資枠: 長期・積立・分散投資に適した投資信託等のうち、金融庁の定める要件を満たすものが対象です。具体的な対象商品は金融庁の対象商品一覧で公表されています。
- 成長投資枠: 上場株式や投資信託等が対象ですが、一部除外される商品があります(詳細は金融庁「新しいNISA」ページを参照)。
「つみたて投資枠で買える商品は、成長投資枠でも買える」という包含関係にあるため、同じ投資信託を両方の枠で積み立てることも制度上は可能です。
よくある誤解
誤解1: 「年間360万円を使い切らないと損」
年間の枠は「その年に投資できる上限」であって、ノルマではありません。使わなかった年間枠が翌年に繰り越されることはありませんが、生涯投資枠1,800万円は残ります。月々の積立を長く続けて生涯投資枠に近づいていく使い方も、制度が想定している使い方の一つです。
誤解2: 「値上がりすると生涯投資枠を圧迫する」
生涯投資枠は買付額(簿価)ベースで管理されます。買った商品が値上がりしても、消費される枠は買ったときの金額のままです。評価額が1,800万円を超えても制度上の問題はありません。
誤解3: 「成長投資枠は個別株専用」
名前の印象と異なり、成長投資枠でも投資信託を買えます。「積立はつみたて投資枠、それ以外は成長投資枠」という商品の縛りではなく、対象商品の範囲と年間上限が異なる2つの枠、と理解するのが正確です。
自分の積立計画で枠がどう使われるか
「毎月この金額を積み立てたら、何年で生涯投資枠に到達するのか」「年間360万円を超えた分はどうなるのか」は、積立実験室で確認できます。積立額を入力すると、つみたて投資枠→成長投資枠→課税口座の順に制度のルール通り配分し、NISAの節税効果とあわせてシミュレーションします。枠配分の計算方法は積立実験室の計算方法で公開しています。
出典
- 金融庁「新しいNISA」 — 制度の概要、各枠の上限、非課税保有期間の無期限化
- 金融庁「つみたて投資枠対象商品」 — つみたて投資枠の対象商品一覧
- 国税庁 タックスアンサー No.1463「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」 — 税率20.315%の根拠
- 租税特別措置法(e-Gov法令検索) — 第37条の14(NISAの法的根拠)