FIRE(Financial Independence, Retire Early=経済的自立と早期リタイア)という言葉は広まりましたが、実際には「通常FIRE」「Lean FIRE」「Coast FIRE」「Barista FIRE」など、たくさんの型が混在して語られています。この記事では、それぞれの違いを整理し、当サイトの計算エンジンで必要資産額と取り崩しの成功率を試算します。
試算は当サイトの想定値(バランス型ポートフォリオ: 期待リターン5.2%・リスク13.1%)に基づく一例で、将来を保証するものではありません。
2026年8月31日の訂正: 「バランス型ポートフォリオ」の中身が、この記事とサイト内のプリセット選択画面とで違っていました。同じ名前の配分表がコード内に2つあり(2025年6月に作り直したときに古いほうを消し忘れていました)、この記事は古いほうの「先進国REIT 10%を含む」配分を使っていました。積立実験室で選べる「バランス型ポートフォリオ」(先進国債券ヘッジあり 10%)に統一したため、期待リターンが5.4%→5.2%、リスクが14.2%→13.1%になり、成功率と Coast FIRE の必要額もそれに応じて動いています(4%での成功率55%は変わりません)。結論は変わっていません。
2026年8月30日の訂正: 試算に使う期待リターンが、信託報酬を引く前の値でした。当サイトのシミュレーターは信託報酬を引いて資産を成長させるので、この記事だけ年0.1ポイントぶん楽観に出ていました。控除後に揃えたため、成功率が1ポイント下がり(4%で56%→55%)、Coast FIRE の必要額がわずかに増えています。あわせて、下のボックスが使っていたリスクの値が2026年8月17日の想定値見直しに追従しておらず、本文の表と2ポイント食い違っていたのも直しました。結論は変わっていません。
まず必要資産額のグラフです。同じ「FIRE」でも、生活費の水準や勤労収入の有無で必要額はまったく変わります。以下、型ごとに整理していきます。
2026年8月17日の更新: 先進国株式の想定リスク(値動きの荒さ)を、GPIF が公表している外国株式の推計値に合わせて 18.0%→20.35% に引き上げました。従来は期待リターンを GPIF の想定レンジの上寄りに置きながらリスクだけ小さく見積もっており、楽観が二重にかかっていたためです。本記事の数値もこれに合わせて更新されています。結論は変わっていません。
FIREの基本 — 「4%ルール」と必要資産
多くのFIRE論の出発点は「4%ルール」です。年間生活費の25倍の資産があれば、そこから毎年4%(=生活費1年分)を取り崩しても資産は長持ちする、という経験則です。逆に言うと、必要資産は次の式で決まります。
取り崩し率4%なら年間必要額の25倍、3%なら約33倍です。ここから、生活費をどう設定するか・勤労収入で一部を賄うか、という違いで各タイプが分かれます。
型ごとの整理
生活費の水準で分ける: Lean / 通常 / Fat
| 型 | イメージ | 年間生活費(例) | 必要資産(4%基準) |
|---|---|---|---|
| Lean FIRE | 支出を絞った質素なFIRE | 180万円 | 4,500万円 |
| 通常FIRE | 平均的な生活費でのFIRE | 300万円 | 7,500万円 |
| Fat FIRE | ゆとりある生活費を確保するFIRE | 600万円 | 15,000万円 |
生活費を絞る「Lean」なら必要資産は小さく、ゆとりを求める「Fat」なら大きくなります。同じ4%ルールでも、生活費の設定次第で必要額は数倍変わります。
勤労収入で取り崩しを減らす: Barista / Side
完全に働くのをやめず、一部の生活費を勤労・副業収入で賄う型です。取り崩しでまかなう額が減るぶん、必要資産が下がります。
| 型 | イメージ | 取り崩しで賄う額 | 必要資産(4%基準) |
|---|---|---|---|
| Barista FIRE | パートなどで働きつつ資産で不足を補う | 180万円 | 4,500万円 |
| Side FIRE | 副業・小さな事業の収入を持ちつつ資産で補う | 240万円 | 6,000万円 |
Barista FIRE(名称はカフェ店員として働くイメージから)は、勤労収入で生活費の一部を賄うことで、必要資産を通常FIREより大きく減らせます。この例では年間180万円の取り崩しで済むため、必要資産は通常FIREより40%少なくて済みます。
追加拠出をやめても目標に届く: Coast FIRE
Coast FIRE は少し毛色が違います。「もう十分な種銭があるので、あとは一切追加投資せず(=Coast=惰性で)運用だけしても、リタイア時には目標額に届く」状態を指します。必要な現在額は、将来のFIREナンバーを運用利回りで割り引いて求めます。
通常FIREの目標7,500万円に、追加拠出なしで届くために今必要な額は次の通りです。
| リタイアまでの年数 | 今必要な額(追加拠出なし) |
|---|---|
| 10年 | 4,506万円 |
| 20年 | 2,707万円 |
| 30年 | 1,626万円 |
若いうちに種銭を作れれば、その後は生活費を稼ぐだけでよく、老後資金の積立からは解放される——これがCoast FIREの発想です。時間(複利)を味方につける型と言えます。
「4%なら安全」とは限らない — 取り崩し率と成功率
ここが一番大事な検証です。4%ルールはもともと米国の30年を対象にした経験則で、早期リタイアの長い期間や、別の想定リターンでは成功率が変わります。当サイトのバランス型想定(期待リターン5.2%)で、40年間・取り崩し額をインフレで年1%増やす条件のモンテカルロ(5,000回)にかけると、次の結果でした。
| 取り崩し率 | 40年間資産が尽きない確率 |
|---|---|
| 3% | 80% |
| 4% | 55% |
| 5% | 33% |
| 6% | 18% |
この想定では、4%でも成功率は55%にとどまりました。40年という長い取り崩し期間と、米国株一本ではないグローバル分散の想定リターンでは、4%は「ほぼ確実」ではないのです。取り崩し率を3%に下げると80%まで上がります。
自分の数字で試す
実験本文の数値は固定です。ここで変えても記事の結論は変わりません。「記事の前提」と「あなたの条件」を並べて表示します。
| 項目 | 記事の前提 | あなたの条件 |
|---|---|---|
| 必要資産 | 7,500万円 | 7,500万円 |
| 40年成功率 | 55% | 55% |
生活費は通常FIREの年300万円・取り崩し期間40年・インフレ年1%で固定。リスク(13.1%)も固定し、利回りと取り崩し率だけを変えています(2,000回の簡易計算)。
想定利回りや取り崩し率を変えると、必要資産と成功率がどう動くかを上のボックスで試せます(本文の前提はバランス型5.2%・4%のまま固定です)。もっと細かく生活費や勤労収入まで動かしたい場合はFIRE実験室へ。
これは「4%ルールが間違い」という話ではなく、前提(期間・想定リターン・インフレ)を変えれば安全な取り崩し率も変わるということです。早期リタイアで取り崩し期間が長いほど、より保守的な率(3%台)や、勤労収入との併用(Barista/Side)で取り崩しを減らす設計が効いてきます。取り崩し開始直後の暴落がどれだけ効くかは、姉妹記事取り崩し期の暴落リスクでも検証しています。
なお、この成功率は想定リターンから乱数を引いて出したものです。想定値を置かずに、実際に起きた相場で同じことを数えると、かなり違う数字になります——米国株155年の全開始月で試した結果は4%ルールは、どの30年でも通用したかにあり、そこで両者がなぜ食い違うのかも整理しています。
この試算の限界
- 想定リターンは当サイトの一例です。 バランス型ポートフォリオの期待リターン5.2%・リスク13.1%という前提を変えれば、必要資産も成功率も変わります(根拠はデータの透明性レポート)。
- 税・社会保険料を単純化しています。 実際の取り崩しには課税や国民健康保険料などがかかり、必要な取り崩し額は額面の生活費より大きくなりがちです。
- 成功率はモンテカルロの推定値です。 対数正規リターンによる近似であり、現実の暴落の順序や連続性を完全には再現しません(計算方法は計算の仕組み)。実績の並び順をそのまま使った場合との差は4%ルールの検証を参照してください。
- 生活費・収入は例です。 あなたの数字に置き換えて考えてください。
出典
- データの透明性レポート — 本試算で使用した期待リターン・リスクの想定値とその根拠
- 取り崩し期の暴落リスク — 取り崩し率と資産寿命の検証(姉妹記事)
- 積立実験室の計算方法 — モンテカルロ・シミュレーションの仕組み